経理の仕事をしたいと思い転職を考えている人や、人事異動により経理部で勤務することになった人にとっては、経理の仕事についてさまざまな不安があることでしょう。
そして、そのなかのひとつに「経理業務に携わるからには簿記の資格が必須ではないか」というものがあるはずです。では、これは実際どうなのでしょうか。
今回は、経理業務に携わるうえで簿記の資格が必須とされるかどうかについて解説していきます。
経理の仕事のなかで、簿記業務はどのような場面で必要になるのかについてお伝えしていきましょう。簿記業務は会社の「決算」のために行われているといえます。
よく「決算」と「会計」は混同しがち
決算とは通常の場合は1年間のお金の出入りや取引の記録をもとに報告書にまとめるという業務を指します。
一方、会計とは、会社外部の関係者つまり投資家や債権者といわれる利害関係者にむけて、簿記によりまとまった決算書を報告する業務のことを指すのです。
このように、簿記業務はまさに決算書の作成のために必要不可欠な業務といえます。
ちなみに決算書は「損益計算書」と「賃借対照表」の2つより会社の経営状態を表した重要書類です。この決算書によって投資家や債権者が自社を判断するので、株式会社であれば株の売買に影響しますし、金融機関で融資を受けることが可能とされる金額も異なってくるのです。また、会社が法人税を申告するためにも利用されます。もちろん決算書に間違いがあれば納税額にも差が生じ、法人税の未納と判断されてしまうこともあります。つまり、会社経営に簿記は重要だといえます。
まず、経理業務に携わるといっても、会計担当者であるのか、経理全般の責任を担う管理職であるのかによっても異なります。
会計担当者として経理業務に携わる場合、具体的にいえば「日商簿記3級」や「全経簿記2級」といったレベルの知識が必要であると判断されます。「損益計算書」「賃借対照表」や「手形取引」「掛取引」といった基本的な知識も求められるでしょう。
一方で、管理職として会社の決算に直接携わるような場合は、専門的な知識とされる「減価償却」や「棚卸し」の理解が求められます。これは「日商簿記1級」もしくは「全経簿記上級」と同等のレベルが求められているといえます。
経理の転職に必要な簿記のレベル
経理への転職を目指す場合、簿記の資格は必須です。経理の求人では、応募の要件として簿記が指定されている場合がほとんど。簿記には1級から3級までありますが、日商簿記2級を要件としているケースが多いです。
全経・全商簿記より日商簿記
一般的に、経理の転職で必要とされているのは、日商簿記です。簿記の資格には、全経簿記・全商簿記・日商簿記の3種類があります。全経簿記と全商簿記は日商簿記よりも難易度が低く、それほど評価されていないようです。転職を目指して簿記の資格を取得するのであれば、日商簿記がおすすめです。
未経験なら日商簿記2級がおすすめ
経理未経験で転職を目指すのであれば、日商簿記2級がおすすめです。経理の実務に必要な知識の多くを身に付けることができます。経理の求人で求められている簿記の資格は日商簿記2級がほとんどなので、転職先の選択肢を広げるためにも、日商簿記2級の取得を目指しましょう。
日商簿記3級の評価は高くない
日商簿記3級は、経理の転職で高く評価されているわけではありません。あくまでエントリーレベルの資格であり、日商簿記3級を取得していても、採用の判断で有利になるほどではないようです。
日商簿記3級しか取得していない場合でも、2級を目指して勉強していることをアピールすれば、採用される可能性はあります。多くはないですが、日商簿記3級の応募の要件としている求人もあるので、根気強く求人を探してみましょう。
キャリアアップしたいなら日商簿記1級
すでに経理として働いていて、経理職としてキャリアアップを目指すのであれば、日商簿記1級の取得を目指しましょう。将来、公認会計士や税理士を目指す場合にも役に立ちます。
ただし、未経験から経理を目指す場合には、無理に日商簿記1級の取得を目指す必要はありません。実務経験がなく、日商簿記1級レベルの知識だけがあっても、高く評価されないからです。日商簿記1級を目指すより、日商簿記2級を取得して実務経験を積む方がおすすめです。
簿記を持っていない場合
簿記の資格を取得していない場合でも、経理へ転職できる可能性はあります。
それほど多くはないですが、「未経験OK」「未経験歓迎」と書かれた経理の求人に応募しましょう。経理の実務経験を積みながらでも、簿記の取得は可能です。むしろ、実務に触れることで簿記の理解が深まり、資格が取得しやすくなるでしょう。
まとめ
同じ経理業務経験者であっても、さまざまな考え方をおもちでしょう。ただ、簿記の知識は業務に携わる際には多ければ多いほど良いという考えにたどりつくでしょう。またまた直属の上司や社長のサポートが手厚く、細かく処理を教えてもらえる環境が整っていれば、簿記の知識はあまり豊富でなくても支障がないかもしれません。けれど、このように他力本願で携わるような業務ではないことは、肝に銘じておきましょう。簿記の資格を取得できない場合であっても、独学で学んである程度の知識は身につけておくようにしてください。
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