欧州連合(EU)の行政執行機関にあたる欧州委員会は1日、原子力発電を天然ガスと共に「環境に配慮した投資先」として認める方針を発表した
発電時に二酸化炭素(CO2)を排出しない原発は「脱炭素」社会実現に向けた一定の役割が期待される一方、事故が起きれば甚大な被害につながるため、今回の方針には加盟各国や欧州議会の反発も予想される。また、国際的な原発マネーの流れや日本の原発政策にも影響する可能性がある。
原子力を「環境に配慮した持続可能な投資先」に
欧州委は2021年12月末、原子力を「環境に配慮した持続可能な投資先」に分類するリストの草案を加盟各国に通知した。各国から意見を求めたうえで、今月中に正式提案する方針。草案は、環境に負荷の少ない経済活動を定義し、脱炭素化に向けた投資を促すEU規則「タクソノミー」(20年7月施行)に基づき欧州委が作成した。
欧州委は1日の声明で、原発や天然ガスには「再生可能エネルギーを基本とする将来への移行を促進する役割がある」との見解を示した。欧州メディアによると、草案は45年までに建設許可を得た原発に対し、放射性廃棄物の安全な処理などを条件に「持続可能」なエネルギーとして分類することを明記している。
タクソノミーのリストを巡っては、CO2排出量の多い石炭火力発電は除外されたが、原発などについては加盟国の意見が割れ、判断が先送りされてきた。原発推進派のフランスや原発導入計画のある中東欧の国々はリストに含めるように求める
一方、すでに22年までの原発全廃を決めているドイツや、オーストリアは反対している。独メディアによると、ドイツのハベック経済・気候保護相は1日、草案は「間違っている」と批判し、原発を認めることで放射性廃棄物などの「核のごみ」が残り続ける危険性を改めて指摘した。
日本の再生エネルギー事情
第一の問題は、再生エネを急激に増やす現実的な道筋が描けていないことだ。再生エネは現状、コストが高く、天候によって発電量が大きくぶれる。比率を高めることを目的化して、無理に導入を急げば、電気料金は高騰し、安定供給体制が揺らぐのは間違いない。
円滑に電源構成を変えるには、再生エネで安定的、効率的に発電できる技術革新や、電気をためておける大容量で安価な電力網向け蓄電池の普及が欠かせない。再生エネ発電の適地から、遠方の電力消費地まで着実に電気を送る送電網の整備にも巨額の投資が必要となる。しかも、それをわずか10年足らずで実用・実装レベルにしなければならないのだ。
1973年の第1次石油ショックを受けて始まった「サンシャイン計画」からまもなく半世紀になる。これほど時間をかけても、雨が多く平地の少ない日本において、太陽光発電はいまも、安定的で安価な電源とは言えない。あとわずか10年で、どこまで課題を解決できるだろうか。未知数と言わざるを得ない。
再生エネの性急な導入は、家計にも負担が跳ね返る。2012年にスタートした再生エネ電力の固定価格買い取り制度(FIT)は、再生エネで発電した電気を電力会社が買い取り、そのコストを電気料金に上乗せして回収している。つまり利用者の負担になる。その額は当初、月260キロ・ワット時の電気を使う標準世帯の場合、年700円足らずだったが、21年度に1万円を超えた。制度を導入した当時の民主党政権が、太陽光の買い取り価格を高く設定したため、高値で電気を買ってもらえる太陽光発電事業に参入する事業者が相次ぎ、買い取り価格の総額が大きく膨らんだためだ。
十分な再生エネ発電所を整備できるかどうかという問題
FIT後の「太陽光バブル」といわれた参入ラッシュの結果、国土面積あたりの太陽光発電の設備容量は、既に世界一になった。適地が残り少なくなったうえに、景観破壊への反発も強まっている。静岡・熱海の土石流被害を受け、山間部に太陽光パネルを設置するために盛り土で平地を造成すると、土砂災害を起こしやすくなると懸念する声も上がる。
「迷惑施設」と見られ始めたメガソーラー(大規模太陽光発電所)を大量に建設するのは容易でない。
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